ポケモン小説



「ルイ!メシが逃げる!」
「逃げるか!」ルイは再び歩く。

2人が並ぶのに少し時間がかかったのは、ここが"ガラクタ広場"だからだ。

「今日の晩メシなんだろな♪」

レンが鼻唄の合間に言った。曲は"草の声"という童謡だ。

「どうせババァの"特製"豆スープは入ってるんだよな」

ルイの言葉の後、レンの鼻唄が低くなって止まった。

「…おいら、アレきらいなのよね」
「おれも」

ルイ。アリアノ生まれ、アリアノ育ちの14歳。
8つになる前に親を次々と亡くした。親戚兄弟はいない。
親友・レンの家に世話になるかわりに、レンの祖父が団長を勤める劇団"アリアノ・デ
ルー・ア"で裏方の仕事をしている。




「パンの〜焼ける香りに〜♪」

レンの歌声が薄暗い廊下に響き渡る。
メロディーはやはり"草の声"だ。歌詞は全然違うが。

元の歌詞、どんなだったっけ。
確か"風の運ぶ香りに…"

ルイがもやもやと頭を動かしているうちに、目的の部屋に着いてしまった。

「メシじゃ!!」

レンの声は空間を震わせた。
…余程腹をすかせていたのか。

ルイが呆れ顔を上げた。

「…ん?」

何だか、様子がおかしい。
食堂…5、6人の団員が一角に集まっている。
彼らは、この建物で生活をしているメンバーだ。

ココは、…寮。
アリアノ・デルー・アの劇団に所属していて、住居の無い者は寮を使う。

…ルイはレンの家に寝泊まりしているので、ココを訪れるのは…食堂で食事をする時の
み。まさに今だ。


…とにかく、今ルイが"おかしい"と感じたのは、団員達の様子を見たから。

どうも空気が沈んでいるのだ。