ポケモン小説



「どうしたんです?」

レンが話しかけた。彼もルイと同じものを感じとったようだ。

「うぉ、レンか」一人の団員が驚いて口を開く。
どうやら2人の存在には気付いていなかったらしい。


「…いや、な。倉庫あるだろ?」
「はい」
「ズタボロ」
「…は?」

レンはテーブルから身を乗りだした。
ルイも気になってレンの横から顔を出す。

「中が全部めちゃくちゃにされてる。今警察呼んだから」
「え……」

知らなかった。
自分がたそがれている間にとんでもないコトが起こっていたらしい。
ルイはレンの顔を見た。

「それじゃ……」

公演はどうなるんですか?

ルイの口がもぞもぞしだした。

「ああ…荒らされたのは第2倉庫、だよ」
「なんだ…」レンは息を吐いた。

第2倉庫は、いわゆる資料室だ。
…公演に支障はなさそう。

「…まぁ、おいら、じっちゃんトコ行ってきます」

そうだ、コイツは団長の孫。
レンは小走りで食堂をあとにした。メシのことはすっかり頭から抜けたようだ。
…当たり前のことだけれど。

足音が消えゆく。

その場に立ちつくしていたルイの体を、空腹がつついた。

「…くっちまうか」

どうせしばらくは戻ってこないだろうから。

団員達も腕を伸ばしている。




「…………たのに」



「………見たのに」



何者かの声は、何者にも届かなかった。