ポケモン小説






…結局のところ。
盗まれたのは数冊の資料本。
あとはただ単に荒らされていただけであった。

内部の人間の犯行、盗まれたものも高価なものではないらしい、ということで、警察がこ
れ以上つっこむこともなかった。




「誰がやったと思う?」

ルイは、横の親友に尋ねた。答えはない。

「…レン?」
「あのさ」
「ん?」

彼は濁った目で、真っ直ぐどこかを見つめている。

「ルイはおいらの友達だよな?」
「…どうしたんだよ?」
「友達だよな?」

2度目の質問にどきりとする。

「ぅ…うん」
「絶対何があっても友達だよな!?」
「だから!…どうした」

どこかで何かが崩れるような音がした。辺りが静かになる。


「おいら、捕まるかもしれん」

「…………はい?」


あとは、そのまま動揺だった。

「まさか…」
「あ!」レンが慌てて声をあげる。「いや、本のコトじゃなくて!…いや、本のコトだけ
ど」
「なんなんだよ!…何、犯人お前?」
「ちち違うよ」

風が小さく響いた。

「そうじゃなくて…何ていうの?持ってるだけで…犯罪になるモノってあるじゃん」
「…は、犯罪……?」

ルイは少しひいた。
まさか、親友が罪を犯しているとは。

…黙って5秒考える。

「アヤシイお薬?」
「違う」

答えのストックがなかったルイはたまらずきいた。

「何だよ?」
「聖書」
「セイショ?」ルイはぽかんと口を開けた。
「…その」レンの声が小さくなる。「"資料本"とか言ってるけど、盗まれたの…聖書なん
だ」
「…うん」
「実はおいらん家、代々信者でさ。…もちろんおいらもそうさ。
でもコレ…バレたらやばいじゃんか」

ルイは首を傾げてみせた。

「何でやばいの?」

「だって、極刑クラスの犯罪…」

と、ふとレンは右上を見た。

「…お前、ホントにエルラ人?」
「当たり前だ」
アリアノ生まれアリアノ育ちの生粋のエルラ国民だ、と付け加えるのはやめておいた。

「この国じゃ、そういうのは死刑になるの。オケィ?」