ポケモン小説


「…さあて。これから、何が起こると思う?」
暗い通路。地下と思われる空間には、女の声が響いていた。
「やがては世界を掌握する…すばらしいでしょ」
ぱっと辺りが明るくなった。誰かが、廊下の明かりをつけたようだ。
壁に並ぶガラスの管達が晒された。中には緑色の液体が走り、大きいものには…何か気味
の悪い物体が入っている。そしてそれは定期的に脈を打っているように見えた。
女は赤い髪をかきあげながら、ふふっと笑った。
目の前に立つ男を舐めるように見つめる。…男は平然とそこにいた。
「だからね、シオ。…アンタの力が必要なの」
「…僕の力か」
「アンタ程の実力を持つポケモントレーナーなら、我がギンガ団の強力な柱になれる」
「…スカウトってヤツ?悪いけど僕は、君達のやり方は好きじゃない。…お断りしておく
よ」
女の口元に微笑の色が見えた。
「…コレを見ても、同じコトが言えるのかしらね」
「…どういう事だ?」



『結局のところ、捜索隊の努力も虚しく、珍しい色違いのポケモン、"赤いギャラドス"の
姿は、ひとめ目撃することさえできなかったのでありました……』
やっぱりね。そういうオチだと思ったよ。
私はカーペットに立った。
大体こういう番組で新発見があるはずがない。
今まで《宇宙人はいるのか?》《雪男はいるのか?》なーんて、くだらないのを見たこと
はたくさんある。が、見つかったためしがない。というか、見つかったら番組どころじゃ
ありませんよ。
色違いのポケモンだって。…いないでしょ。
だって人間だって、青い肌の人とかいたら怖いじゃん!
『というわけで、特別番組《赤いギャラドスを追え!》全国ネットで、テレビコトブキが
おおくりしまし』
…ぶちっ

ざまぁみろ。ナレーターが言い終わる前に、テレビの電源を切ってやったぜ。

あーあ、くだらない。
「世の中、腐ってる」とまでは言わないけど。

私は部屋を出た。外に行き、大自然の空気を浴びてすっきりしようと思ったから。

『よしきた!コンテストダイジェストです!本日のノーマルランク賢さコンテストの優勝
は…とってもいいコなポケモンで出場のダイサクさん!』
リビングでは、つけっぱなしのテレビからだろうか…元気ハツラツな高い男の人の声が響
いていた。
今度はポケモンコンテストですかそうですか。
こういうのって、ペットバカな人達が、ポケモンにキレーなお洋服だのアクセサリーだの
つけちゃって、「うちの子は…」とかやってるんだろうか?めでてーな。

私が階段の最後の一段を降りた時だった。

「ヒカリ!」

ママの声が私の名前を呼んだ。ママはたった今玄関に立っていたらしい足を、パタパタと
こちらへ運んできた。

「なぁに、ママ」
「さっき、ジュンくんがあなたを呼びに来たわよ。何だかよくわからないけど、大急ぎな
んだって!」
「えぇ〜…」