ポケモン小説


ジュン。
こいつは私の友達…というかただの幼なじみだ。
ちなみに男。別にそんなんじゃなくて、単にココ、フタバタウンで年の近い子が少ないか
ら相手をしてやってるだけだ。
…また、やっかいなコトになるな…。何てこった。自然との語らいをしようという私の計
画がゴミ箱行き。
「ジュンくん、何だろね。あの子、せっかちでしょ?話を聞く前に行っちゃったの」
「いいよ、いつものコトだし…行ってきます」

そう、ヤツはとてつもなくせっかちなんだ。せっかちが故に、周りを見ないで何かをやら
かす…面倒なヤツなんだ。…悪いヒトじゃないんだけどね…。
私は玄関に降り、ドアのノブに手をかけた。
「そうだ、ヒカリ」
「ん?」
「草むらに入っちゃダメよ」
「わかってるよ、野生のポケモンが出てくるからでしょ?」
私が言うと、ママは「そうなのよね…自分のポケモンを持っていれば大丈夫なんだけど
…」とブツブツ呟いた後、「行ってらっしゃい。遅くならないようにね」と言って中に
ひっこんでいった。
草むらにいる野生のポケモンは、人を襲うことがあるらしい。全く危険な世の中だ…

外はヒンヤリとしていた。元々、このシンオウの地は寒冷な気候にある。
今は秋だからそうでもないけど、やっぱり肩が冷たくなる。…帽子、被ってくればよかっ
たな。

はす向かいのジュンの家の前には、すぐに到着することができた。
さぁて、お坊っちゃんでも呼ぶか!私がドアへと近づいた次の瞬間――


――どんッ!!

「に゛ゃああッ!!」

私は尻餅をついてしまった。
ジュンだ。ジュンがいきなり家から飛び出して、こちらへぶつかったんだ!
私を弾く威力は半端なかったらしく、向こうも尻餅をついた。

「…なんだってんだよー!」
「こっちのセリフだっ!!」
「ってヒカリか!」
ジュンは立ち上がって、乱暴に服に付いた土をはらう。

「湖に行くからさ、早く来いよな!」
「みずうみ…?」

何だ。いきなり何を言い出すんだ。

「いいか、ヒカリ!遅れたら、罰金100万円な!」
「はああ?」

100万円…ってガキか。
相変わらず人の話を聞こうとしない彼は、ばたばたとある方向に駆けて行った。…と思っ
たら戻って来た。

「忘れ物!」

バタンとドアが閉められた。
私は呆然としつつも立ち上がり、スカートの汚れを落とした。

何でいきなり湖に?

…まさか。

私の頭の中に、あのおどろおどろしい曲が流れた。

"赤いギャラドスを追え!"


アイツなら、有り得る。